カウンターオファーへの対処法

転職先からオファーレター(内定通知書・採用通知書)を受け取ったら、次は退職の意思を上司に伝えますが、このときにカウンターオファー(引き留め交渉)を受けるケースがあります。
最近の当社の調査では59%もの会社員が転職時にカウンターオファーを経験していることがわかっています。カウンターオファーを受け入れるかどうかは、自身のキャリアに永続的な影響を及ぼす重要な決断です。カウンターオファーがそもそも退職を考えた理由を解決するものであるか、受け入れた場合、その後の社内での立場に影響がないかを考慮しなければなりません。
当社の調査結果を見ると、多くの人材が退職手続き中にカウンターオファーを受けているものの、オファーを受け入れた人材の39%が1年以内に転職活動を再開しています。つまり、退職を考えた人材が社内で別のポジションに就いても、長期的にその会社にとどまることにはならないケースも多いということです。
この記事では、カウンターオファーを受けて現職に留まるか、それとも新しい職場での挑戦を選ぶかで迷ったときに自問したい5つの質問に沿って、決断の決め手となるポイントをご紹介します。
カウンターオファーで迷ったら自分に問いかける5つの質問
1. そもそも、なぜ転職を考えたのか?
転職の決断は決して簡単ではありません。転職市場を調査し、求人に応募して、今の仕事を辞めようと考えたのには、それなりの理由があったはずです。このところモチベーションが上がらない、仕事のスピード感が物足りないなどと感じていたのかもしれませんし、少しずつ会社の価値観とずれてきてしまったのかもしれません。転職を考え出すきっかけは人それぞれですが、収入面の不満だけを転職理由にあげる人は、実はあまり多くありません。
カウンターオファーで昇給を提案された場合は、収入面以外に転職を考えた原因はなかったのか、改めて自分に問いかけましょう。給与増を通じて求められていると実感できるのは喜ばしいことですが、報酬以外で退職を考えた問題が根本的に解決されるでしょうか。
2. メリット・デメリットを十分に比較できているか?
カウンターオファーを受けた時に、自分の存在意義が認められたという実感から残留するというオプションが頭をよぎるのも決して特別なことではありません。同僚や上司、職場への忠誠心と愛着がある以上、当然のことです。退職を決める際には、感情的な面と転職理由を分けて、考えを整理することが大切です。上司に退職の意思を伝える際に、まるで別れ話をしているような気持ちになることもありますが、冷静に、合理的に考えるようにしましょう。
まずは、メリット・デメリットをリストアップします。自分でリストアップするだけでなく、信頼できる家族・同僚以外の友人にもメリット・デメリットがほかにないか相談してみてください。客観的な視点が加わることで、感情的な決断ではなく、慎重に検討されたものになっているかを確認することができます。
3. なぜ今になって昇給を提示されたのか?
カウンターオファーでは、大幅な昇給が提示されることも珍しくありません。そうすると、転職先に移るよりも今の仕事に留まる方が魅力的な選択肢にみえてくるものです。給与増がすべての課題を解決できるものかを自分に問い直したいのは先述のとおりですが、昇給が本来の目的ならば、求人を探す前に上司に相談しているはずです。
さらに大切なポイントは、「なぜ今になって、会社はあなたに昇給を申し出たのか」です。退職を切り出さなければ、あなたの仕事へのコミットメントや貢献が報われなかったのか。これまではなぜ昇給の話が上がらなかったのか。会社があなたを過小評価していたのか、それとも、必要最低限の給与額であなたを確保しておこうと考えていたのかもしれません。
ビジネスの観点からみれば、新しい人材を採用してトレーニング・育成に投資するよりも、既存の従業員を昇給することで維持することのほうが安上がりなのも実情です。これがカウンターオファー(引き留め)の真意なのであれば、長期的な視点に立ち返って考えることが大切です。
4. 残った場合も将来像が描けるか?
一度は他社への転職意思を伝えたあなたに対して、周囲が持つイメージは少なからず変わります。これまで築いてきた信頼関係の度合いにもよりますが、場合によっては、あなたを戦略的業務や機密情報を扱う仕事から外そうとする同僚が出てくるかもしれません。
また、あなたが退職を真剣に考えたということが、会社によるあなたの評価に影響を及ぼすかどうかを考えてみましょう。あなたが転職活動をしたことで、会社はあなたのことを以前ほど信頼できる人材と見なさなくなり、職場で居心地の悪い思いをするかもしれません。
「一度は辞めたがっていた」という印象を周囲の同僚・上司に与えていることを心に留め、会社に残った後の将来的な昇進・昇格にも悪影響が出ることはないのかを冷静に見極める必要があります。
5. 自分が大切にしたいのは何なのか?
新しい環境で、新しい仕事にチャレンジしたいという気持ちが勝るなら、それはカウンターオファーを受け入れるべきではないというサインです。
実際に、ロバート・ウォルターズの調査では、カウンターオファーを受け入れて会社に留まった人のうち39%が1年以内に転職活動を再開していたことがわかっています。
カウンターオファーの提示を受けると、慣れている環境・仕事でこれまでより高い年収を得られるという条件に魅力を感じるかもしれません。まずは一度話を持ち帰り、前出のポイントに沿いながら新しい職場に移るメリット・デメリットをリストアップし、冷静に決断するようにしましょう。
会社は社員を買い戻したい
会社にとって有能な人材を引き留めることにはメリットがあります。そのため、優秀な社員が退職の意思を示すと、上司が金銭的な条件を提示することがよくあります。転職にはリスクがあり、今の会社での昇給や昇進は魅力的であるものの、カウンターオファーを受け入れる前に、もう一度いくつかの要因について検討しましょう。
1. 会社がカウンターオファーをする理由が、自分の目的と合致しているか
通常、社員を新規に採用して研修を行うよりも、昇給や昇進を提案して既存の社員を引き留めた方コストがかかりません。これが、会社があなたを引き留める一番の理由かもしれません。
会社にとっては引き留めることがメリットとなることは明らかな一方、あなたが現在の仕事に満足しておらず、別のキャリアを求めるだけでなく、新たな仕事を求めて面接を受け内定をもらったという事実は変わりません。
2. 信頼関係が失われる
あなたが退職を真剣に考えたということが、会社によるあなたの評価に影響を及ぼすかどうかを考える必要があります。
あなたが転職活動をしたことで、会社はあなたのことを以前ほど信頼できる人材と見なさなくなり、歯医者や病院に行くことすら疑い、職場で居心地の悪い思いをするかもしれません。
多くの人材が退職手続き中にカウンターオファーを受けているものの、オファーを受け入れた人材の39%が、1年以内に転職活動を再開しています
3. 退職の意思を示さなくても、昇給や昇進が提案されたのか
退職の意思を示さなくても、あなたの仕事ぶりに見合った評価が得られたかを考えてみる必要があります。もしその答えが「ノー」なら、退職の意思を示すまで社員を適切に評価しないような会社に残りたいと思うでしょうか。
会社がカウンターオファーとして、ボーナスという直接コストの形で昇給を提案する場合があります。特にボーナスが年収のなかで大きな比率を占める業種では、こうした提案が社員のファイナンシャルプランに影響を及ぼす可能性があります。
4. そもそも退職したいと考えた理由は何か
金銭的な報酬は魅力的な提案ではあるものの、転職活動をする人材はキャリアアップにつながるチャンスを求める傾向にあります。
そのため、金銭的な利益のみを理由にカウンターオファーを受け入れても、数カ月後に自分の仕事に不満を感じなくなるとは限らないのです
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