新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワーク(在宅勤務など)、時差出勤、就労日や時間帯を複数に分けたローテーション勤務など、全ての社員がオフィスに出社するのではない新しい働き方が広まってきました。出社しないことで、感染リスクを減らすことはできますが、オフィスに社員が集って働かないため、従来職場で毎日行われていた仕事以外の会話=雑談が減り、部署間の連携やチームビルディングに支障が出るといった弊害も起きています。本記事では、こうしたカジュアルなコミュニケーションが減ることで、企業にどういった影響がでるのかを検討し、オンラインでどのように雑談を実施できるかを考えます。
例えば、顧客先への移動時間、オフィスの席で近くに座っている人との何気ない会話、業務の休憩中の雑談といったカジュアルなコミュニケーションの場では、業務に直結した打合せでは話題として上がらないような、仕事の細かな根回しや公私における個人的な状況の共有、共通の趣味についてなどを話します。特にこの数年では国内でも外資系企業を中心に社員がくつろぎやすいようなコーナーをオフィス内に設けるケースが見られ、オフィスにキッチンカウンターやソファーなどのリフレッシュスペースを設ける企業が多くなりました。海外には、職場や家で同僚や友人と焼き菓子を片手にコーヒーを飲む文化が定着している国もあります。日本でも、かつては休憩室での会話や社内イベントでの交流も、同じような役割を担っていたと考えられます。
そのような一見業務と関係ないと思われがちな雑談ですが、社員の生産性向上やモチベーション向上に大きく影響するとも言われています。その一つは、業務における直接的な効率化です。例えば、一人で向き合ってつまずいていた業務も、気軽に上司・同僚とコミュニケーションを取り合うことで、細かなアドバイスを受けやすくなり、また報告が社内で上がりやすくなります。スティーブ・ジョブズが「創造性は何気ない会話から、行きあたりばったりの議論から生まれる」という言葉を残していますが、イノベーションも、業務では話す機会が少ない人とのコミュニケーションやチームとのたわいもない雑談を通じて生まれることが少なくありません。
生産性への直接的な影響に留まらず、雑談は社員のメンタルコンディションやモチベーションにも大きく影響します。雑談をすることで、周りの人と仕事以外のつながりができるため、話しやすい環境をつくることができます。そのような環境を作ることは、社員の「心理的安全性」の向上に寄与し、会議での発言が出やすくなったり、結論に納得しやすくなる効果が出たりします。社員総会や社内イベントで行っていた企業のビジョン浸透も、カジュアルコミュニケーションを通じて社内に浸透していきやすく、結果としてエンゲージメントの高い働き方になります。
あるコールセンターの休憩時間中に、パートの社員同士の雑談が弾んだ場合、センター全体の幸福度が上昇し、受注率が20%以上向上したという結果が出た事例もあります。また、職場コミュニケーションの充実が仕事のやる気に好影響をもたらしているという調査結果や、反対に社員間コミュニケーションの不足が業務に影響を及ぼしているといった調査結果も散見されます。「社員間のコミュニケーション」は、多くの会社で、人事部が長年取り組んできた課題の一つではありますが、アフターコロナ時代の働き方の変化と共に、その重要性が一層高まっています。
上に挙げたような雑談=カジュアルコミュニケーションは、オフラインの場(対面)で生まれるものがほとんどでした。オンラインの環境下では相手の状況や表情が見えないために話しかけるタイミングを見計らうのが難しいなど、意思疎通をとりにくいと感じる人もいます。出社する社員が減っている、人が集まる機会をつくるのが難しいコロナ禍において、カジュアルコミュニケーションは減っているといえます。
では、オフラインとオンラインの仕事環境が併存する中、企業はどのようにカジュアルコミュニケーションの施策を取るべきなのでしょうか。テクノロジーを駆使しながら、オフラインと同じような効果を生む工夫が必要です。
最も簡単に始めやすい施策としては、普段業務で用いているチャットツールを活用する施策が挙げられます。例えば、カジュアルコミュニケーション用のスレッドやチャンネルを作成します。あいさつ、天気などの話をするだけでも効果的ですが、加えてお互いの役に立つようなテーマ、例えば「リモートワーク用に購入したもの」などを設けることで、より話しやすくなるでしょう。ここでのポイントは上司が受身姿勢をとるか、自ら積極的に会話を切り出すかにあります。テレワークやローテーションワークが増えると業務の話題以外で上司・部下の接点がほとんど無くなってしまいます。そこで、上司が週末の予定や暮らしのちょっとしたエピソードを話してくれれば、部下たちにとっては、上司との心理的な距離感を少し縮めてくれて、業務でのアドバイスが欲しいときも声がかけやすくなります。まずは自分が模範になるつもりで上司が話を切り出せば、部下たちも躊躇なく雑談のやり取りができるでしょう。
オンラインでカジュアルコミュニケーションを意識的につくることも有効です。例えば、普段業務で用いているビデオ会議用ツールを用いて、「コーヒーブレイク」のような、カジュアルコミュニケーションをとる時間をセッティングします。朝礼の時間、ランチ、午後のコーヒータイムなど1日のリズムをつくりやすい時間に入れることで、気分転換することができるため一層効果的です。また、普段話さない社員同士にテーマを与え、オンラインで1on1で話す時間つくっている会社もあります。普段あまり話さない他部署のメンバー同士のペアを組んで会話を促すことで、イノベーションやコラボレーションのきっかけになるでしょう。
最近では、上司と部下での個別面談(1on1ミーティング)を実施している企業は多くあるかと思いますが、社員のエンゲージメントを高めるためにも、コロナ禍においては一層この時間が重要になります。1on1ミーティングを毎週または隔週で行うことで、部下にとっては普段しにくいカジュアルな質問や雑談もしやすく心理的安全性、引いてはエンゲージメント維持につながります。上司と部下のだけでなく、社内メンターとの面談など、より多くの人と個別の会話ができるよう、意図的にセッティングするのもおすすめです。
先述のように、テレワークやローテーションワークが続くと、お互いへの遠慮もあって業務以外に上司・部下が関わる機会が減ります。それが常態化すると、上司に対する心理的な距離感が開いていき、上司から電話・チャット連絡が来ると緊張してしまうようになったり、部下は自発的なコミュニケーションを避けるようになります。発端は相手への遠慮だったはずが、こうした負のスパイラルが働いて、イノベーションが生まれづらい、風通しの悪いチームを形作ってしまうのはエンゲージメントにも大いに影響してしまい、とても残念なことです。午後の10分間コーヒーブレイクなど、上司が雑談の時間を自らつくり、心理的な距離感を埋めていくようにしましょう。
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