渡部陽一さんは、戦場カメラマンとして常に世界情勢の最前線に立ち、世界の今を発信し続けています。過酷な環境を物ともせず世界中を飛び回り、異なる環境で挑戦を続けるうえで常に大切にしているのは、相手へのリスペクトと万全の準備だそうです。ロバート・ウォルターズ・ジャパン代表取締役社長のジェレミー・サンプソンと対談し、グローバル環境への「転職」にも通じる、自分が情熱を感じる世界への挑戦の仕方について語りました。
「なぜ戦場カメラマンという過酷な仕事を選ばれたのですか」。対談冒頭のサンプソン社長の質問に、渡部さんは静かに語り始めた。
「大学生の頃、講義で知ったアフリカの狩猟民族に『直接会ってみたい』と思い、会いに行きました。当時その一帯でルワンダ内戦という民族紛争が起きていて、僕の目の前で、多くの子どもたちが助けを求めて来たのですが、僕の手では助け出すことができませんでした」
「『僕に何ができるだろうか』と考えた時に、子どもの頃から好きだったカメラ、写真を使えば、子どもたちの状況を多くの人に届けられる、それで何かが動くきっかけになればと考えた仕事が、戦場カメラマンだったのです。世界中からまだ戦争というものが無くなったことはなく、紛争地で泣いている子どもたちがいる限りは、カメラマンとして記録に残していく。架け橋となり、気づいてもらう写真を撮っていく。ルワンダ内戦の子供たちとの出会いが『鉄の柱』として体に打ち込まれました」
若い時に感じたパッションを追求し、一生の仕事とした渡部さん。それに対して、サンプソン社長は、「パッション」を感じる仕事は後から気づくこともあると自身の経験も踏まえて語る。
「私は大学時代ビジネスを専攻しましたが、人材業界に入るまで、この仕事が自分がパッションを感じる一生の仕事だと気づきませんでした。若い頃に情熱を追いかけてキャリアを見出すことも素晴らしいですし、後から自分がパッションを感じる仕事を見つけることもあるかもしれません。大事なのはその変化が起きた時に、変化に対応した準備をして、次のキャリアにつなげることです」
世界的な戦場ジャーナリストである渡部陽一さん。その渡部さんにサンプソン社長は「どのようにしてプロフェッショナルとなられたのですか」と尋ねた。
駆け出しの頃、戦場カメラマンの仕事の仕方を手取り足取り教えてくれたのは、世界中の戦場で出会う世界中のカメラマンだったと渡部さんは語る。
「写真のとり方だけではなく、撮った写真をどのように発表していくのか、そのプロセスを現場で何ヶ月も生活しながら、それぞれの国で教えてもらったんですね。そういった仕事の全体の輪郭を教えてくれた方々が、みなフリーランスだったというのが(自分の今の活動の)ベースにありますね」
戦場カメラマンの魅力は、世界の最前線に立って、世界史の現場に立ち会うことだと渡部さんはいう。
「世界情勢のダイナミックな動きというのは、カメラマンとして惹きつけられる、大きなスイッチですね。やっぱりカメラマンとしてその現場に立つこと。現地に行く前に、調べたり、歴史や背景をいろいろと組み立てては行くんですけれど、現場に入ってみると、知っていることでも、いざその現場で見たり触れたり、食べたり聞いたりすると、その状況が、つながるというか、状況が『入ってくる』感覚になるんですね。必ず現場に入ってみること。これが約27年の戦場報道の中で、カメラマンとして大切に意識しています」
渡部さんの仕事観を聞いて、サンプソン社長はビジネスとの共通性を指摘した。
「渡部さんは、常に現場に入って、世界中のプロフェッショナルと切磋琢磨しながら、自らの技量を磨いてこられたのですね。自分の信念と情熱が導く方に向かって、自らをプロフェッショナルとして鍛えていく姿勢は、ビジネスにも通じるところがあると思います」
「世界中、行けば行くほど、宗教の違いや民族の違いや、生活慣習の違いなどに、揺さぶられるほどびっくりする違いということが、やっぱりエンジンの力になっていますね」と渡部さんは世界の現場に行く魅力を語る。
「今日、オーストラリア出身のサンプソン社長と話し合うというのは、僕にとってドキドキです。オーストラリアは多様性の究極をいく国だと感じたのですが、いかがでしょうか」
渡部さんの問いかけにサンプソン社長は、自らの経験を語る。
「オーストラリア人といっても、いろいろな人種・価値観の人がいます。オーストラリアでは、この人はこういう国籍だと見かけで判断できません。私は、この仕事に携わることになって、いろいろな人達と話しますが、ひとりひとり個人として向き合っていて、相手を日本人だ韓国人だインド人だと考えたことはありません。日本人が外資系企業に行って働く際も、国籍や文化の違いを超えて、個人として信頼関係を築くことが大切です。そのためにはオープンマインドであること、固定観念を持たないということが大切です」
「ロバート・ウォルターズのこの東京オフィスでも、40カ国以上の国籍の人たちが働いています。全員が個人でありユニークでありながら、平等です。互いをリスペクトして仕事をしています。そして多くの言語、文化が飛び交う環境の中でうまく仕事を進めていくには、真摯に互いに向き合って正直に仕事を進めることかと思います。そして互いの文化をリスペクトすることです」
渡部さんは「社長の今のお話で最も重要な言葉は『リスペクト』だと思います」と話し、自らの信念を語った。
「どの国に行った時でも『リスペクト』が、写真を撮っていくときの気持ちの柱ですね。その国に行ったときにはその国のルールや慣習に寄り添いながら写真を撮っていくことを気をつけています。それに飛び込んでいきなり写真を撮り始めるとかではなく、しばらくは生活を共にしながらゆっくりと。土足で踏み込まない。どの地域にも敬意を払って、お邪魔して、写真を撮らせていただくという姿勢は大切にしています」
「やはり固定観念を持たずに、相手の価値観・文化を尊重して、人として向き合っていくということが、グローバルな舞台で仕事をする際に必要ですね」とサンプソン社長は応じた。
常にリスクと隣り合わせにあり、難しい判断を迫られる場面も多い渡部さんの仕事。「戦場報道の仕事のうち、8割は危機管理」と、事前準備の重要性を強調する。
「手に入れた情報の繰り返しの確認、現地でつながる方々と密な連絡、異常事態が起きたときの複数の避難経路の確保。約80%の労力、資金を危機管理に集中的に注いでいき、残りの20%が、実際に現地に降り立った時のカメラ技術、インタビューのとり方、現場での動き方なのです。8割の段取り、2割の技術。これが戦場報道に向き合うことの僕自身の線引きになっていますね」。準備を怠ると怪我をして最悪死んでしまうかもしれないと渡部さんは語る。
「どうやってそういったことが起きないようにするか、段取りを組み立てていくのかという危機管理が、取材の中でものすごく大切なんですね。一人では絶対飛び込まない。前線では必ずその国で生まれた戦場のガイドさん、地域の言葉のアクセントを使いこなせる通訳の方、そして何かあった時のセキュリティ。僕は最低限4人でチームを組み立てて動いていく。戦場ガイドが渡部さんそこまでと言ったら、絶対に行かない、そこには50回以上行ったし大丈夫、すぐ撮って帰ってくるからと思えるときでも、行かない。必ずそのチームの現地の人の言葉に従うことを、戦場報道、特に前線に向かううえで、特に気をつけますね」
サンプソン社長は、「転職の世界でも準備が大切で、チームで支援する私たちは、カメラマンの『ガイド』のような役割です」と語る。
「渡部さんのおっしゃられた通り、目標を達成するためには事前の準備が必要で、きちんと計画を持って優先順位を持ってやっていくべきだという話は、転職を考えている人においても、全くそのとおりだと思います。どういった会社なのか、職場環境をきちんと調査し、評価したうえで挑むというのが大切です」
「転職は新しい環境への挑戦なので、様々な情報やオプションがある中で、多くのことを決断していかねばなりません。私達はその道筋を見出すためのお手伝いをしています。判断を誤るリスク、十分な準備をしていなかったために勤めたかった会社の面接を失敗してしまうリスクなどを軽減するために、適切な情報、ガイドを提供しています」
渡部さんが紛争地に赴く際の準備で最も気を配るのも、「ガイド」との関係だという。
「その国に入っていきなりその人と組もうということにはなりません。イラクでもレバノンでも、この人と一緒に動いていくのはどうだろうか?と思った人には、その人の自宅にお邪魔するんですね。そして、ご家族にどんな振る舞いをしているか、行ったり来たりしながら感じさせてもらうんです。接し方を見ていて、大丈夫だという判断をしますね」
「生活をともにしながら、この人はリスペクトできる人、素敵な人だと思った人にチームのお願いを出すことがほとんどです。そういったチームを組んでおくと、一回の取材だけでなく、1年、5年、15年と、その地域をカバーする時に一緒に動いてくれます。レバノンのガイドさんは、駆け出しの頃、僕も独身でそのガイドさんも独身だったのが、しばらくすると結婚して、しばらくすると子供もできて、父親になっていたり、そういった長い環境で、仕事のパートナーというよりも、本当に家族のように、友達になっていくんです」
サンプソン社長は「新しい仕事に挑戦する方々をガイドする私たちの仕事においても、長期的な人間関係を築くことが大切です」と共通点を明かす。
「長期的な人間関係を構築するというのは、どのような業界であっても、成功するために重要なことではないでしょうか。私達も、新しい仕事を考えている方々がロバート・ウォルターズ社を訪問いただいた際は、家にお招きしているようにおもてなしします。どういった背景の方なのか、どういったインスピレーションをもっているのか、どういったキャリアに興味があって、悩みは何なのかということを長い時間をかけて聞いていくことによって、信頼関係を構築しています。何人かの相談に来られた方々とは、非常に長いお付き合いをさせていただいており、10年、15年という人もいらっしゃいます。私たちはそういった転職を考える方々と向き合い、その人たちのニーズ、バックグランドに応じたカウンセリングを、人として向き合い、提供しています」
綿密な準備と、信頼関係を築く心構えを持って取材に臨む渡部さん。「悩んだらゴー」という言葉で、自分の感覚を信じて挑戦する重要性を語る。
「そこに行って何ができなくてもいいです。そこに行ってみるだけでいいと思います。その過程だけでも、いろいろなつながりが醸されていくので、まずはそこに行って、何も言えなくても、できなくても、見るだけでも聞くだけでも、行ってみることです」
世界の現場で挑戦を続ける渡部さんが、これから人生のキャリアを築いていこうとする人たちに贈る言葉として選んだのは「さあ、旅に出よう」だった。
「さあ、旅に出よう。この言葉で、大きなきっかけになればと思いますね。普段と違うことに挑戦することも旅。自分がパッションを感じる仕事に挑戦することも旅だと思います。旅の力で、僕もこれからも大きなパワーをもらっていくと思います」
サンプソン社長も微笑みながら、力強く同意した。「人生の分岐点に立っている方が、今のままにとどまるのか、新しい道にチャレンジするのかということであれば、私は新しい道にチャレンジするのが良いと思います。渡部さんが世界中の現場で驚きやワクワクを見つけたように、この世界と人生は、多くの可能性に満ちています。新しい仕事で自分の可能性に挑戦してみたい方々には、私たちがパートナーとして話し相手になります。『さあ、旅に出よう』。これ以上の言葉は思いつきませんね」
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