メンター制度とは、所属する上司とは別に、年齢の近い年上の先輩社員や、社歴が近い先輩社員が新入社員や若手社員をサポートする、新入社員からすると相談しやすい兄/姉のような制度です。メンターは英語のMentorからきており、直訳すると助言者相談者という意味合いになります。
サポートする先輩社員を「メンター」と呼ばれ、サポートされる若手社員は「メンティー」と呼ばれます。
似た制度としてはエルダー制度があり、メンター制度と同様に先輩社員が「エルダー」と呼ばれ、新入社員や若手社員をサポートしています。
メンター制度との違いはエルダー制度については仕事の面でのサポートに重点を置くことに対し、メンター制度は精神的な仕事の悩みや人間関係、キャリア形成のサポートを主に行い、仕事のサポートは極端に言えばしません。そのため、直接仕事の利害関係があるような直接の同じ部署の人はつきません。
若手社員の退職率が増加傾向にある原因の1つとして、「仕事の悩みを気軽に相談できる先輩社員がいない」「アラートをあげにくい環境である」ことがあげられます。また年功序列がなくなりつつある現在、新しく入社してくる後輩や、年下の社員に抜かれてしまうことを恐れ、新入社員や後輩に対して「競争・ライバル意識」を持って接してしまい、社員が孤立してしまう状況が出てきています。
こういった背景から、社内のつながりや精神的な悩みを解消し、社内の活性化、社員の満足向上、最終的には離職率の低下のためにメンター制度を導入する企業が増えています。
メンター制度を導入するためのマニュアルは自社で作成している企業や厚生労働省からでている「メンター制度導入・ ロールモデル普及 マニュアル」を参考にしている企業など様々です。
自社で作成している場合、はじめはメンター制度のゴールや意義を社員に理解してもらい、そこから毎年毎年知見や成功事例をため、自分たちなりのメンター制度を作り上げていく企業もあります。
メンター制度の一番のメリットとしては、社内のコミュニケーションが活発化することがあげられます。メンティーだった新入社員がメンターとなり、新入社員を教える。またその新入社員がメンターとなり...とつながっていきます。これはメンタリングチェーンと呼ばれ、メンター制度によって部署を超えた人間関係の構築につながります。
メンターになった社員は新入社員に見られているという意識から、自主的に仕事に取り組み、責任感がでるようになります。また自分のキャリア形成を考えるきっかけにもなるでしょう。メンター制度により、メンティーだけではなくメンター社員の成長を促すことができます。
さらに、メンター制度があることにより、社員間でささいなことでも相談することができるようになり、会社への居心地がよくなる。結果として離職率の低下につながります。
メンター制度のデメリット、メンター制度を導入する上での注意としては、以下のような点があげられます。
このような問題点を解消するために、メンターになった社員には評価項目としてメンターとしての貢献度を入れる、上長含めたメンター制度への理解や研修を実施する等企業側でしっかり取り組み、社内全体で理解を得ることが大切です。
新卒などの若手社員のメンターになる人は3年目以降の若手社員に担当してもらうと良いでしょう。またメンティーに対して、うまくコミュニケーションをとれ、メンターに向いている人がいる場合は、2年連続や1年おきにメンターになってもらい、はじめてメンターになった人へのアドバイス役をやってもらってもいいかもしれません。
メンターになる人はまず相手の言うことを聞く耳を持つことが必要です。相手が深刻に考えているにもかかわらず、それを聞き流してしまう、本来メンティーが相談しなければならないところを、メンターが自分の話をしてしまう人にはまずメンター制度の役割を理解してもらうことが先決といえます。
どのメンターがどのメンティーに対してサポートするのかについては、人事が各々の性格を見た上で判断することが多いです。
メンティーが新卒であれば、採用に関わっていた人事がメンティーの性格を把握していますし、メンターとなる社員についても把握できているでしょう。
ただ、大きな会社など一人ひとりの性格まで把握することが困難な場合は、同じフロアにいる違う本部の社員や違う統括部の社員などメンターとメンティーが顔合わせしやすいような組み合わせがいいでしょう。
メンターになることのメリットは社内でメンターに選ばれたという自分自身のブランディングににつながります。
新卒から同じ会社であれば、メンターになることの意味は一人前になったと会社が評価してくれたと考えることも出来ます。
またメンターは誰でもなれるということではなく、適切なアドバイスができる人、人の気持ちを汲み取れる人がまわってきます。
メンターになると上述のとおり自分の仕事にプラスアルファで負荷がかかります。またメンターになったとしても直接的に自分の仕事の評価に関係するということはありません。年長者になると必ず自分にまわってくるため新人を育てる一環だと考える必要があります。
メンターはメンティーと定期的に面談を行い、仕事の進め方や仕事での悩みの相談にのり、解決に導きましょう。その際に、メンターは答えを提示するのではなく、メンティーに考えさせ、メンティーなりの解決策を導き出してあげましょう。
もちろん、仕事の悩みであれば、親身になって聞いてあげるというのも1つの役割です。一番大切なのはメンティーがメンターへ聞きやすい環境をつくることです。
メンターはメンティーとどのようにコミュニケーションをとるのかは決まっていないことが多いです。ミーティングを組んでコミュニケーションをとってもお茶をするなどし、リラックスしながらコミュニケーションをとっても問題ありません。もちろん会社にもよりますが、大事なのはメンティーが相談しやすい環境をつくりだすことです。
もしメンティーが悩んでいることがわかったら人事に連絡をすることが多いようです。人事権限のある人事に連絡し、その後の人事の対応を待ちましょう。
またその際に人事に言ってほしくなかった、告げ口されてしまったとメンティーに思われないように日頃からメンティーと信頼関係を構築しましょう。
メンティーが学生から社会人になったばかりということもあり、まずは働くということに対する責任などの指導、企業への適応、人間関係に対するアドバイスが中心となるでしょう。
後輩社員も入社し、自分である程度仕事ができるようになってきているメンティーは、他の会社で自分の力を試してみたいと考える社員もでてきます。今の会社でどのようなキャリアを築くのかアドバイスをしていきましょう。
女性社員向けメンター制度の場合は、女性社員が悩む「子育てしながら働く」「仕事の能力の向上」等をテーマにアドバイスすることが多いようです。
管理職となった女性や子育てしながら働く女性をメンターとし、それに続く女性社員を育成することで女性が会社で働くビジョンを描きやすくしましょう。
役員や社長がメンティー、社員がメンターとなり、役員や社長にアドバイスしている企業もあります。内容としては、SNSなどの最新トレンドを社員が役員へ指導し、世代間ギャップや管理職との溝を埋めるのが目的です。
また子育てやワークライフバランスなどのセッションを行うことで、役員は社員の悩みを知ることができ、それにより社内の新しい制度などを作るなど役員にしかできない仕事に活かすことができます。
メンター制度は離職率の低下につながる魅力的な制度ではありますが、そのために会社や社員の理解を得る必要があります。従業員の定着に悩んでいる方は一度検討してみてはいかがでしょうか。
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