収束の糸口が見えない新型コロナウイルスの影響で、「コロナショック」とも呼ばれる景気悪化も起きています。そんな状況の中、ビジネスパーソンには、感染予防のための「新しい生活様式」と呼ばれる生活様式だけではなく、コロナショックを乗り切るために、ビジネスに臨む姿勢や考え方も見直すことが求められています。
ウィズコロナの時代において、これまでの成功パターンは通用しなくなっています。ビジネスに関わるメンバー一人ひとりが、困難な状況に目を背けずに、自らを変化・成長させていくことが、コロナショックを乗り切る鍵となりそうです。この記事では、コロナショックを乗り切るために必要な「成長マインドセット」と、時差通勤・在宅勤務の維持で従業員が一堂に会せない中でも取り入れられる成長マインドセットのトレーニング方法について紹介します。
コロナショックを受けて、業績悪化だけでなく、慣れないリモートワークでこれまで通りに仕事が進められなくなるなど、多くの企業が苦境に立たされています。このような状況では、現状をネガティブに捉え、将来を悲観するビジネスパーソンも少なくないのではないでしょうか。一方で、この苦境をチャンスと捉え、柔軟な発想で困難を乗り越えようとする人々もいます。苦境を前に立ち止まってしまう人と、苦境をチャンスと捉え、新しい挑戦ができる人では、何が違うのでしょうか。
それは、そのビジネスパーソンが「成長マインドセット」を持っているかどうかの違いだといわれています。マインドセットとは、思考の枠組みや考え方の癖、思い込みを指す心理学の用語です。困難を前に、悲観する人とチャンスだと捉える人では、このマインドセットが異なっているといえます。ピンチをチャンスだと捉えられるビジネスパーソンは、自分がどんな状況でも能力を伸ばし、変化・成長できるという「成長マインドセット」を持っています。リーダーだけでなく、組織全員がこのマインドセットを持てば、コロナショックをチームとして乗り切る糸口となるでしょう。
「成長マインドセット」は、モチベーション研究の第一人者である、教育心理学者のキャロル・ドゥエック・スタンフォード大教授によって提唱された概念で、その考え方は欧米を中心に、ビジネスだけでなく、スポーツや芸術の分野でも広く取り入れられています。
ドゥエック教授によれば、「成長マインドセット」を持っている人は、自分の可能性を信じ、挑戦し、学び、自ら能力・スキル開発の可能性を模索し続け、日々の仕事に前向きに取り組むといいます。「成長マインドセット」を持っている人は、自分の仕事の「意味」や「使命」を主体的に考えようとします。成功や失敗といった「結果」や現状の「困難さ」よりも、目標に向かって新たな挑戦をし続けることを重要視します。
そのような考え方が、個人だけでなく、チーム全体にまで浸透している組織では、従業員に幸福感があり、革新的でリスクを取ることを恐れない文化が根付いてるという調査結果があります。結果として、「成長マインドセット」があると、個人はもちろん、組織全体のパフォーマンスが向上し、困難な状況にあっても、結果を出すことができます。
一方で、「成長マインドセット」とは真逆の「硬直マインドセット」という考え方を持つ人がいます。「硬直マインドセット」とは、「人は変われない、人間の才能や能力は生まれつき決まっている」という偏見や思い込みのことです。
この偏見を持つ人は、自分が人より優れていることや過去の実績に固執するため、他者からの評価に敏感です。一度の失敗やネガティブな評価で人生がダメになってしまうと思い込み、失敗を悪だと考えています。そのような人が多数を占める組織では、チーム全体が疑心暗鬼になり、自分に能力がないことが知られることを恐れるため、難しい挑戦や課題に取り組まなくなり、結果として組織全体のパフォーマンスが低下していきます。
危機状態では人は「硬直マインドセット」に陥りやすくなります。そのため、コロナショックを乗り切るためには、まずリーダーが意識的に「硬直マインドセット」を脱し、チーム全体を「成長マインドセット」に変えていくことが大事になってくるでしょう。
それでは、ウィズコロナの状況下で、どうやったらチーム全体を成長マインドセットに変えていくことができるのでしょうか。今日から取り入れられる導入時のポイントと、チーム内、社内に浸透させるためのトレーニング方法を見ていきましょう。
組織のマインドセットを変えるには、目指すマインドセットを定義して、それを各個人に浸透させるプロセスが必要です。「成長マインドセット」を浸透させるのであれば、成長マインドセットのコアとなる「人間は変われる」という幹の部分を共有しましょう。そして、その考え方から生じる、「失敗から学ぶ」「反対意見が出ることを良しとする」「自分自身に投資する」といった価値観をハッキリとした形で言語化し、メンバーと共有することが第一歩となります。テレワークでメンバーが一堂に会することが難しい場合は、チャットツールの機能を活用して伝えるのも良いでしょう。
マインドセットとは「人や組織に内在している無意識の思考の癖」であると言えます。マインドセットが偏っていると、何らかの事象に直面した時に「無意識に」偏った認識を形づくり、「無意識に」偏った判断をしてしまいます。つまり、マインドセットを変える第一歩は、この無意識の思考の癖を、意識的に自覚することにあるといえます。マインドセット(思考の癖)を自覚するには、他者からフィードバックをもらう以外にも、「自分ノート」などに自身の意思決定や言動などを記録して振り返り、自身のパターンを知るという方法があります。「~すべき」、「絶対に~」といった固定的な発言や否定的な言動を自分で記録しておき、週1回、月1回など定期的に「どうしてそう思ったのか」、「どのように変えられるのか」を自問します。こうして自らに変化を促すことで硬直マインドセットに気付くきっかけにもなります。反対に、失敗を恐れずに挑戦する言動・行動がとれたときも記録します。ポジティブな変化を自己承認することでマインドセットが変化していることが実感でき、継続の動機にもなります。
近年の脳科学の研究では、人間の感情を司る脳の領域は、主語を認識できず、自分が他人に発した言葉を、すべてを自分のことして捉えてしまう性質があることが指摘されています。つまり、他人に向けて語った否定的な言葉が、そのまま否定的な言葉となって自分に返ってくるということです。そのため、チームの中で「あの人はできる人」「あの人はできない人」というレッテル貼りをしていると、自分自身に「人は変われない」という「硬直マインドセット」を植え付けてしまうことになります。組織全体に「成長マインドセット」を浸透させるならば、「あの人も変われる」ということを信じ、そのことをメンバーに伝え続けることが大事です。そうすることで、自分自身が変われるという確信が強くなっていくのが実感できるでしょう。
マインドセットが変化すれば、ものの認識や判断が変わり、行動が変わってきます。行動が変わることで、生み出す成果が変わり、成果が変われば周囲からの見られ方が変わります。そうすることで、より一層望ましいマインドセットに即した行動が自然と取れるようになり、結果として、マインドセットがさらに強化され、周囲にも影響が広がっていきます。このサイクルを生み出すためには、「成長マインドセット」に即した行動を選択し続けることが重要です。とりわけ、リーダーがこのサイクルの中心になることができれば、組織への影響力は強くなっていきます。苦しい状況で、例え気持ちが乗り気でなくても「成長マインドセット」に即した行動、そのバリューを体現する行動を選択し続けることがこのコロナショックを乗り切る秘訣になるかもしれません。
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