企業が考慮すべきカウンターオファーの注意点

少子高齢化による労働人口の減少と人材不足に注目が集まる昨今、企業として優秀な人材を確保したいと願うことは当然のことです。優秀な人材が転職を理由に離職を申し出た際に、カウンターオファーを行っている企業もあるようです。カウンターオファーの提示は企業にとって有効な手段といえるのかを検証したいと思います。
カウンターオファーとは?
社員が退職を申し出たときに企業側から行なわれる引き留め交渉のことです。一般的には企業側が昇給や昇格、退職希望者本人の希望する部署に異動させるといった条件提示をすることが多くなっています。
企業にとって、経験豊富で優秀な社員が辞めてしまうと、大きな痛手をこうむることになります。人材補充のために採用活動を行わなければならなりませんし、退職者が出た部署では一人一人に対する業務量の加重が上がります。コスト面ではその社員の採用や教育にかけたコストが無駄になり、不足する人材を補充するための採用コストもかかります。こうしたリスク回避として、カウンターオファー(社員の引き留め)を試みる企業が存在します。
カウンターオファーの実態・リスク
2021年にロバート・ウォルターズが行った「カウンターオファー」についての調査結果では「引き止め交渉に応じない」と6割の会社員が回答しました。このことからもカウンターオファーが受け入れられづらいことがわかります。ではなぜ受け入れられづらいのかについてを解説いたします。
カウンターオファーは有効性が低いことを理解する
まず社員側が「カウンターオファー」に応じない理由は「辞めようと思った理由に対する解決策ではない 」、「一度決めたので心変わりはしない 」という2つの理由で併せて8割を超える結果となりました。
このことからわかるように社員から退職意向を示された時点で、ほとんどの場合は覆せないことがわかります。逆をいえば企業側努力として退職意向が出ないようにすることが重要です。
長期的な解決策ではない
次に重要なのは、手軽にコミュニケーションを取れる環境を整備することです。
当社の調査によると社員側が「カウンターオファー」を検討しない理由として、条件提示が「長期的な仕事の満足度を保証するものではない」、「自分の長期的なキャリア目標と合っていない 」との回答が合わせて6割を超える結果でした。社員側は退職の意向を伝えたことによって見返りとして、ようやく好条件を提示してきた企業に対して、長期的な関係構築をしたいとは思わないのでしょう。優秀な社員に長く勤めてほしいと企業側が思うのであれば、最初からその社員を評価していることを示すことが重要です。例えば給与の見直しを定期的に行うことや、明確なキャリアパスを示すことは有効です。社員側にしたら転職先を探し始めた時点で、すでに新天地へと意識は変わり始めています。そして、考慮の結果、最終的には退職を決意したということであれば、カウンターオファーを受諾したとしても、次の転職まではそう長くないことが予想されます。つまりカウンターオファーは、決して長期的に有効な対策ではないことを意識する必要があります。
チーム内の不平等感、組織への悪影響
カウンターオファーの危うい面として、カウンターオファーを受けた社員以外へ情報がもれた際に起こる不平等感と組織への悪影響があげられます。当社の調査で、カウンターオファーを実施しない理由として企業があげたのが「チーム内で給与や役職の不平等が発生するリスクがある 」、「 会社やチームの文化に悪影響を与えるのではないかという懸念 」でした。企業が懸念しているように特別扱いをしたことによる周りの社員への悪影響、また前例ができてしまったことによるリスクが考えられます。組織全体のモチベーション低下に陥るおそれがあり、カウンターオファーのメリットとデメリットの比重を見極める必要があります。
カウンターオファーには意味がない?
カウンターオファーについて、上記のように考察すると、退職を決意した社員を引き留めてもあまり効果がないと言えそうです。カウンターオファーを受け入れた会社員のおよそ半数(47%)が、カウンターオファー受け入れ後1年で転職していることが当社の調査からもわかっており、優秀な人材を引き留めるための長期的な手段とは言えがたいことがわかります。6か月以内に転職をする社員も27%いました。
有効な手段は?
優秀な人材を引き留めるためにカウンターオファーを実施するよりも、その前段階として「ずっと働いていたい」と思わせる職場づくりに努めることが大切です。やりがいのある仕事を与え、適切な報酬で報い、キャリア形成を整えることや、今まで転職していった社員たちの退職理由を確認することが有効な手立てとなる可能性もあります。
また、時には、退職の意向を示した社員を快く見送り、応援する姿勢をみせることも長期的な企業イメージ向上促進に役立ち、優秀な人材を獲得することにつながるかもしれません。まず組織として社員が満足し最高のパフォーマンスを出すことができる環境を整えることが第一優先事項と言えそうです。
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