【日本】グローバル人材 採用動向レポート 2020
複数の側面で不確実性の高まりが懸念される一方で、国内の有効求人倍率は1.6倍前後をほぼ横ばいに推移し、少子高齢化社会による労働者不足は解消の兆しがなかなか見えません。特にグローバル人材に対しての需要は引き続き高まっています。事務職やサプライチェーン、製造、サービスなどの現場では、時間のかかる単純作業や身体への負担が大きな作業を機械化や自動化することで、人材不足への対策を講じています。さらに、東京オリンピックを目前に控える日本では、ラグビーワールドカップが開催されたことも寄与して国際化がさらに加速しています。外資系企業や海外事業の進む国内大手企業はもとより、最近では交通網・小売・ホテル/サービス・エンターテイメントなどの幅広い職場でも、英語に堪能で国際感覚の優れたグローバル人材の需要が高まっています。
訪日観光客数が増え続けるなか、観光・外食・ホテル・エンターテイメント施設などのサービス業では、特に観光地での消費需要を先読みし全国的にバイリンガル、トリリンガル人材の採用が増えています。また、国内でも日本人旅行者の国内・海外旅行者数が過去最高の水準に達し、オンライン旅行会社(OTA)での求人・採用も著しく増えています。オリンピック後も、大阪万博・IR開発などの期待も高まっていることから、この分野でのバイリンガル人材の高需要は長期化が見込まれます。オリンピックを控えて協賛企業のマーケティング部門や、広告代理店・PR会社での採用も増えています。消費増税を前に国内個人消費の活発化を見込んだ小売大手、Eコマース企業ではデジタル人材、サプライチェーン人材の採用が増えました。
それ以上に目立つのは5Gに期待が膨らむIoTに関連し、クラウドコンピューティング、人工知能(AI)、モビリティ(コネクテッドカー・自動運転)、医療テック、フィンテックなど、新興分野での人材採用の継続的な盛り上がりです。IT・通信・オンライン分野に従事する開発者、セキュリティ・スペシャリスト、エンジニア、コンサルタント、営業人材への引き合いは大変強くなっています。オンライン分野では特にスマホ決済サービスの開始が相次ぎ、金融出身者、アプリ開発者、セキュリティの専門性が高いなど多様な経験・スキルを備えた人材がこの分野に移る動きが見られました。
5Gなどによる先進技術の勢いは製造業などにも広がり半導体、化学・素材、機械、ロボティックス、サプライチェーン分野の人材ニーズにも及んでいます。特に、製造業全域では、テクニカルサポート職、フィールドサービスエンジニア職など技術的な専門性を備えた営業職の求人が多くなっています。
高齢化社会の日本では認知症、アルツハイマー病などの中枢神経系、腫瘍分野(オンコロジー)の診断・治療、ライフサイエンス分野などを中心にヘルスケア業界での人材需要も昨年から高止まりが続いており、レギュラトリーアフェアーズ、メディカルアフェアーズ、安全性情報などを専門とするスペシャリストの引き合いは特に強まっています。また人生100年時代という言葉とともに加速的に広がった健康志向にともなって、栄養補助食品・飲料の原料、オーガニック原料を扱う化学・原料メーカーでも求人を増やしています。
データの集積・利活用の広まりによる個人情報保護法の遵守や、内部管理・セキュリティー対策の不十分による仮想通貨・スマホ決済での問題を受けて厳格化が進む金融規制などに対応するようセキュリティ、監査、リスク・コンプライアンス関連職では専門性の高い人材の採用が増えています。またビジネス環境の国際化で特許・知財・独禁法関連など法務の仕事でもますます高い英語力が求められるため、グローバル人材は法律分野でも引き合いが強くなっています。
長期的な人手不足が深刻で、英語を扱えるバイリンガルの少ない日本では、引き続き国際感覚と語学力に優れた日本人、そして技術職などの高い専門スキルを持った外国人の売り手優勢な環境が続くことが見込まれます。
2019年の残業時間規制、有給5日義務化に続き、2020年には同一労働同一賃金の法律が施行されます。非正規社員の待遇改善と同時に派遣先企業での正社員登用が増えるなど非正規社員の雇用の安定も期待されます。新規プロジェクトの立ち上げや新規参入時などにスキル・経験の豊富な専門人材を短い採用プロセスで確保できるのも派遣社員活用のメリットです。この視点にも注目が集まり、日本でも従来の派遣社員イメージがアップグレードされ、人材の確保・活用でも多様性が広がることを期待しています。
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