【日本】グローバル人材 採用動向レポート 2019
有効求人倍率は上昇を続け、1.6倍という44年ぶりの最高値に達しています。
Society5.0というキーワードとともにスマート社会のコンセプトが緩やかに広がり、2018年はあらゆる産業でデータ利活用やAI開発/導入、クラウドなどのインフラに関わる求人が急増しました。自動運転、スマートサプライチェーン、インダストリー4.0などIoT技術の開発/導入が進むなか、通信インフラ整備の鍵となる第5世代移動通信システム(5G)実現に携わる求人も目立ちました。
RPA・ロボット・機械学習などの先進技術の導入による自動化(オートメーション)が広まるのと同時に、2018年は大手金融機関などでは、一般事務職の席数を段階的に減らす動きも見られはじめました。しかし、大多数の企業では自動化によって従来の職種・ポジションでの業務効率を改善し、収益に直結する仕事などに人知を集約できる環境を整えることで、従業員のワークライフバランスを改善しながらビジネスの競争力を伸ばしています。また、自動化に関わる技術の開発・導入・運用を担う仕事も多く創出されているほか、データ・情報をもとに戦略を編み出すなど、専門知識や経験が鍵を握る仕事、人の手を介すことが付加価値に繋がる仕事では人材需要が従来以上に高まっています。
2018年はフィンテックの台頭など産業構造の変化が現実味を帯びた1年でもありました。フィンテック事業では仮想通貨、ファンドなど金融ビジネスに明るい銀行出身者やアプリケーション開発者の採用が目立ったほか、仮想通貨事業でのサイバー攻撃騒動を受けて監査/内部コントローラー/コンプライアンスの増員に踏み切る企業が相次ぎました。また、GDPRを受けてセキュリティ強化の意識が高まり、セキュリティ人材やセキュリティ商品の営業を担う人材も需要が高まっています。
業界に隔てなく、市場での競争力を高めようとデータサイエンティストを確保・活用したい考えを示す企業も急増しています。また、働き方法案の成立を追い風に、生産性向上を目的にRPA・ロボット・機械学習技術の活用の速度が高まり、これらの先進技術を扱うエンジニア、コンサルタント、営業職の需要も高まっています。このトレンドに付随して、専門人材の給与相場は続伸しており、2019年は過去最高レベルの伸び幅に達することが見込まれます。
東京オリンピックを目前に、全国的な訪日観光客需要の好調を受けて消費財・サービス分野でも営業職、マーケティング職などの需要が高まっているほか、日・英の2ヵ国語が扱えるホスピタリティ分野のスペシャリストは需給の逼迫が顕在化しています。統合型リゾート実施法(カジノ法案)の成立を受けて、カジノ・エンターテインメント施設、周辺の宿泊・MICE・商業施設開発の計画が進めば、外国人客の応対を担えるバイリンガルのホスピタリティスタッフの大規模な採用活動に繋がります。営業職、マーケティング職、ジェネラルマネジャーなどのポジションでも人材需要が膨らみ、新規参入各社の採用活動時期が重なれば、人材獲得競争に至ることが予想されます。
先述の技術革新に加えて、国内企業の海外事業の拡大、海外拠点の増強と外資系の新規参入・国内事業拡大、クロスボーダーM&Aの増加などグローバリゼーションの流れも加速しています。そのため2018年も業界に隔てなく広範な領域で、グローバルのビジネス慣習と英語・日本語に堪能なグローバル人材を採用したいという企業が多く、業界/職種での専門的知識・スキルと経験を備えたグローバル人材の需要は特に高く、昨年までに続き需給は逼迫しています。外国人留学生の増加、留学生の日本語力・学力の向上などを背景に一部の仕事では外国籍人材の採用には緩やかな増加が見られます。
しかし、景況感とグローバル化を追い風に高まり続ける国内のグローバル人材需要に対して供給数は圧倒的に足りないため、2019年も採用市場は売り手優位の傾向が高まることが予想されます。優秀な人材を採用するためには、競争力のある報酬はもとより、自社のビジョンと成長性、技術革新への投資、自社内でのキャリアパス、研鑽を積める環境、仕事の面白さなどを審査・選考の過程で候補者に売り込むことが一層重要になるでしょう。
関連コンテンツ
すべて見る自動車 自動運転技術の発展・適用が2020年・2035年を目処に段階的に進んでいくため、それにあわせて専門領域のエンジニアのニーズが増えていくでしょう。検知・自動ブレーキなどのカメラシステム、レーダー、ウルトラソニックなどを扱えるソフトウェアエンジニアの人材需要は今後さらに高まっていくことが予想されます。電気エンジニアも同様に増加傾向にあり、機械エンジニアは前年比ほぼ横ばいで、引き合いは依然として強い傾向にあります。 若手~中堅層の引き合いが増加 プログラミングなどシステム周りを担える人材、特に30~45歳の若手~中堅層への引き合いが強まっています。ロボット開発、アルゴリズム開発などの経験を持
もっと読む経理・会計 金融サービス 2018年はフィンテック事業会社の採用が急増しました。仮想通貨、ファンドなど金融ビジネスに明るいことが評価され、多くの銀行出身者がフィンテック分野に転職しています。仮想通貨を巡ってはサイバー攻撃による流出の騒動を受けて、金融庁が規制を厳重化していくことが見込まれるため、各社は規制遵守に向けた体制強化に踏み切りました。仮想通貨大手では、監査人材、内部コントローラーを大量採用しており、この動きは2019年はさらに広がることが予想されます。新興・成長分野のため経験・知識に富んだ即戦力人材を求める一方で、経営陣が比較的若いことやテクノロジーへの精通度といった都合などから年齢層
もっと読む製造 自動車 自動運転、コネクテッドカーなど技術の進化が期待される自動車分野では、コンポーネント/テストを担うソフトウェアエンジニア、電気エンジニアの採用が活発で、当社で扱う求人数、採用成立件数ともに当社開業以来最高の水準に達しています。2018年は自動車関連メーカーの多くが自社に開発担当者を据えはじめ、同時にサプライヤーが完成車メーカーにオンサイトエンジニアを常駐させる動きも広がっています。また大手メーカー各社がサプライヤーの見直しを進めたことにより1次サプライヤーでは営業体制を強化する動きが見られ、営業スペシャリスト、新規開拓(ビジネスデベロップメント)スペシャリストの採用が増えています。
もっと読む