採用・転職市場動向2026:ホスピタリティ・エンターテインメント・リテール(西日本)
2025年10月に終了した「大阪・関西万博」の影響は、現在も関西地域のホスピタリティ業界の採用市場に影響を及ぼしています。万博開催前に必要な人員が確保された後、イベント終了後には約2万人の臨時雇用者が労働市場に復帰し、ホテルや観光施設、旅行関連企業の空きポジションが迅速に埋まりました。その結果、次の大規模イベントや新たな観光施設のオープンが予定されていない限り、2026年に採用活動が大幅に活発化することは見込みづらい状況です。
消費者向け小売業界でも採用は低調で、とりわけラグジュアリーセクターでは、中国からの訪日観光客による消費が減少しています。百貨店では、日本国内の顧客による来店数や売上が減少しており、その背景には可処分所得の減少や生活費の上昇による家計への負担増加があります。さらに、大手ラグジュアリーブランドが世界的な経済成長鈍化に対応するためコスト管理を強化したことで、2025年は関西地域における消費者向け小売業やラグジュアリー販売職の採用が最も低調な年となりました。
AIでは代替できない収益顧客との関係構築
関西地域のホスピタリティ、ラグジュアリーの小売、エンターテインメント、旅行関連企業は収益圧力に直面しており、多くの企業が高付加価値顧客や富裕層、高額消費を行うVIP層への対応を優先する方向へシフトしています。このような中で、洗練されたコミュニケーション能力や文化的感受性を持ち、一人ひとりに合わせた特別な体験を提供できる営業職が高い需要を集めています。また、コンサルティング型かつ営業志向のビジネス開発経験を持ち、顧客ニーズを把握しながら戦略的成長を促進できる候補者も求められています。これらの人材は、顧客との信頼関係を構築し、新たな持続可能な収益源を生み出す役割を果たします。
一方で、AI技術がマーケティング分野でその役割を拡大しているものの、パーソナライズされた対応やトラブル解決、複雑な問題への対処など、人間ならではの共感力や柔軟性が求められる場面では、依然としてカスタマーエクスペリエンスの専門家に対する需要が存在しています。このような責任を真摯かつ柔軟に果たせる人材は、AIでは代替できない価値を提供できるため、高く評価されるでしょう。
採用活動では、経験豊富なシニア層と若手候補者の両方を積極的に採用する動きが見られます。日本全体で平均年齢が50歳に近づく中でシニア層は増加傾向にありますが、一方で将来的な人材プール形成の重要性を認識している企業は、有能な若手候補者を惹きつけるために魅力的な給与パッケージや柔軟な働き方、速やかな昇進ルートなどを提供しています。この流れは社員定着率の向上にもつながっており、明確なキャリアパスや社内異動機会、従業員エンゲージメント促進への取り組みが重視されています。また地理的には、関西以外からも候補者を募る動きが広がっており、とりわけ関西出身でライフスタイルや家族との時間、生活コスト削減などを理由にUターン転職を希望するプロフェッショナルへの注目が高まっています。
柔軟な働き方への対応が急務
2025年は求人件数に対して候補者数が多かったため、転職による給与増加率は多くの場合5~10%程度と控えめでした。労働力の供給が豊富で、多くの企業がコスト削減の一環としてパートタイムや契約社員の採用を進めている現状では、2026年に転職を通した大幅な給与増加を期待するのは難しいでしょう。ただし、高度な専門知識を持つシニアマネジメント職やラグジュアリー商品の販売職、また大きな商業的影響力を持つリーダー職については、例外的に高い給与増加率が見込まれます。
給与が依然として候補者の意思決定プロセスにおいて最も重要視される要素であることは変わりません。しかし、日本国内で生活費が上昇している現状では、わずかな給与増加だけでは数少ない経験豊富なプロフェッショナル人材の転職意欲を引き出すのは難しいでしょう。関西以外から優秀な人材を呼び寄せたい場合には、引っ越し支援金や住宅手当などを含めた条件提示が求められる可能性があります。
また、非金銭的な福利厚生も非常に重要です。候補者たちは、明確な昇進基準、新しいスキルを習得する機会、そしてより広範囲な責任を担うチャレンジなど、自身の成長につながるポジションを強く求めています。将来性が不透明なポジションに留まりたくないという考え方も広まりつつあります。
さらに、多くの関西企業ではハイブリッド勤務や在宅勤務制度への対応が東京ほど進んでいない点も課題となっています。このギャップは特に若手社員や家族を持つミッドキャリア層から敬遠される要因となっており、一部では柔軟な働き方を求めて東京へ転職するケースも見られます。そのため、関西企業にとって柔軟性の向上は単なる採用活動だけでなく、既存社員の維持にも直結する喫緊の課題と言えるでしょう。
この分野の給与相場・市場動向に関して詳しく知りたい場合は、給与調査ガイド2026(PDF)をご覧ください。
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Akimasa Kataoka
ディレクター, 大阪
2007年にテック&トランスフォーメーション部門のアソシエイトとして入社。アソシエイト・ディレクターに昇進した後、2020年に大阪へ拠点を移し、ロバート・ウォルターズ大阪オフィスの成長と同社の西日本エリア拡大を牽引しています。