近年、外資系を始めとしたグローバル企業で、「企業文化」とのマッチングが、人材活用の文脈から重視されています。「企業文化」とは、伝統的日本企業でも言われていた言葉かもしれませんが、グローバル企業における「企業文化」は少し意味合いが異なるようです。グローバル経済で活躍する有能な人材が力を発揮する組織に重要な「企業文化」について、ロバート・ウォルターズが採用支援を担ってきたクライアント企業の事例から考えてみました。
「企業文化」重視の組織というと、従業員が会社の求める型に合わせるようなスタイルをイメージする方もいるかもしれません。しかし、外資系企業を始めとした、グローバル企業で求められる人材は、まず、プロフェッショナルであるということなのです。自分の職種やポジションに対して、高い専門性を持っている高度な人材ということになり、どのポジションでも企業の求めるままに、自らを順応させていくといったスタイルとは真逆の働き方になります。
高い専門性を持ったプロフェッショナルを、ビジネスの必要性に応じて様々なポジションごとに集めていく。それがグローバルで戦うために必要な人材獲得の必須条件になります。高い専門性を持った人材を多種多様なポジションごとに集め、それぞれが自分の専門性を活かして、力を発揮していく環境が必要になってきます。
そのような高い専門性を持った様々なバックグランドのプロフェッショナルたちが、組織として力を発揮し、成長するために必要なのが「企業文化」なのです。それぞれの専門性と個としての強さを維持しつつ、組織として同じ方向を向くために。「企業文化」のマッチングは、スキルのマッチングと同じくらい大切ですが、日本の企業ではこれまで、あまり重視されてきませんでした。
では、そのような専門性を持った人材が、多様なポジションのもと、一つの方向性を向く「企業文化」は、どのようにして作られるのでしょうか。それにはいくつかの要素があると私たちは考えます。
まずは、「経営者の掲げるビジョン」への共感です。経営者が、どのような未来を創造するために会社を経営しているのか、その夢ともいえる「ビジョン」に、組織の皆が共感しているか、というのが一つの「企業文化」の強さになります。
次に、それぞれのメンバーが、仕事を通じて、どのようにして社会や顧客に価値(パーパス)を提供するかというそれぞれのミッションをいかに内面化し共有できているか、何を大切にしているかという価値観(バリュー)をいかにすり合わせられているかが求められてきます。
それぞれがプロフェッショナルとして力を発揮しているのですから、そのような仲間に対しては、お互いを個として認め合うリスペクトの風土が必要です。
そのようなビジョンやパーパス、ミッション、バリューをすり合わせ、お互いを個として認め合うことで、年齢や国籍、性別や専門性が違う人々が同じ方向を向いて力を発揮することが出来るのです。
そのような「企業文化」は、ダイバーシティの尊重と言い換えることも出来るかも知れません。多様なバックグランドの人々が力を発揮する組織は、単一のバックグランドの人々の集団よりも強みを発揮する、それが「企業文化」の発想なのです。決して、一つの決められた「企業文化」に自分自身を押し込めていく世界観ではなく、ダイバーシティが実現している状態なのだと言えます。
お互いが認め合い、力を発揮できる「企業文化」が実現されるには、働いている人が満足感が高い、風通しの良い環境づくりが必要です。例えばテクノロジーの活用での効率化や、オフィス環境を居心地よくする、個々の仕事にやりがいを感じられるように日々挑戦と成長を実感できる仕事の設計、自分が出した成果が合理的に反映される待遇システム、キャリアが飛躍できるような機械の提供などもそのような環境づくりに当てはまります。
では、どうして今、日本企業にこの新しい「企業文化」が求められているのでしょう。それは、経済がグローバル化する中、企業の競争相手が、日本国内にとどまらなくなったからです。つまり、より高い専門性とプロフェッショナルなスキルがメンバーには求められるようになり、競争の相手は、国外の市場や企業となった時、「ダイバーシティ」のない企業は競争力を失う時代となったことが言えるでしょう。高い専門性を持ち、ダイバーシティを保ったまま、企業としての魅力と組織力、成長力を得ようと思った時、従来の日本の考えにはなかった「企業文化」が強く求められる時代となってきました。
高いスキルセットを持ち、「企業文化」とマッチする人材を獲得するためには、その企業の大切にしている価値観や風土をよく知った上で、候補者一人ひとりの人格や価値観をよく理解して、そのふたつがマッチするかを判断しなくてはなりません。
ロバート・ウォルターズは、コンサルタント一人ひとりが、企業の価値観を深く理解し、転職候補者に人として向き合い、寄り添い、ともに人生の選択肢を探していきます。このようなマッチングは、1985年の創業以来、私たちがずっと続けている姿勢ですが、「企業文化」が大切になった時代、より求められるようになってきたのかも知れません。
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