「通年採用」でプロフェッショナル人材確保の時代へ

春が到来し、多くの会社で新卒採用の時期を迎えています。新型コロナウイルスの影響から、21年春採用では企業説明会中止が相次ぎ、対面での面接が避けられるなど、例年とは状況が大きく違っています。また、この変化は今後の新卒採用の変化を加速させていくのかもしれません。
経済活動のグローバル化と技術革新が急速に進み、産業構造もビジネスの慣習も大きな変革期を迎えています。人工知能(AI)などの先端技術に携わる高度IT人材を巡っては国際的な人材争奪戦が繰り広げられるようになりました。日本型雇用の見直しとともに新卒採用のあり方にも見直しの動きが広がっています。
海外では、日本のように新卒生を一括採用するという慣行はありません。退職者が出た場合の人員補充と事業戦略に基づいた増員・ポジションの新設の際に採用するというのが一般的です。日本でも外資系企業を中心に「通年採用」がこれまでも実施されてきました。最近では国内大手企業でも「通年採用」に踏み切るケースが散見されるようになりました。
なぜ「通年採用」がいま求められているのか。そして「通年採用」を成功させるコツとはーー。
経済のグローバル化がもたらした「通年採用」への流れ
2021年春入社の分から、経団連が設けていた大手企業の採用面接の解禁日などを定めた指針は廃止され、代わりに政府がルールを設けました。政府は2021年入社と2022年入社は「従来どおり」という就職活動の方針を打ち出していますが、政府は従来から「通年採用」を促しており、今後は一括採用から「通年採用」への流れが加速すると考えられています。それはどういう理由からでしょうか。
従来の新卒一括採用は、終身雇用と社内教育、ジョブ・ローテーションなどの日本の雇用慣行とセットになって行われてきました。しかし、グローバル化とテクノロジーの発展により、従来の日本の雇用慣行では、企業は十分な競争力を保つことができなくなってきたということが背景にあります。企業が競争力を保つために、「通年採用」という仕組みを取り入れる事例が増えてきています。
専門性の高いプロフェッショナル人材が求められる
グローバル化とテクノロジーの発展によって、なぜ従来の日本の雇用慣行を維持することが難しくなり、なぜいま「通年採用」が求められているのでしょうか。
企業が国内だけではなく、国境を超えた国外の企業と競争する時代になり、国外企業とのビジネスで勝利するためには、より専門性の高い人材を確保する必要が出ています。そのような人材を確保するためには、従来の慣行に沿って新卒学生を一括採用し、社内で教育するというフローではスピード面から見ると必ずしも十分とはいえません。日本企業のビジネスが国際市場で競り勝っていくために、優秀で専門性の高い即戦力人材またはポテンシャル人材を採用する必要性が一層高まっています。
もう一つの背景が、テクノロジーの進展です。アジャイルという言葉とともに事業判断の迅速化が進んでいます。一括採用した従業員を度々配置転換で教育し直しながらビジネスニーズの変化に適応していくのが難しい局面にあるため、即戦力のあるプロフェッショナル人材を、その都度、迅速に確保していくことが重要だと考えられるようになりました。
選考方法も「クリエイティブ」に
未経験の新卒生を採用し、社員教育を施しながら数年後に戦力にするのではなく、未経験でも「戦力」になるポテンシャルを備えた学生、即戦力となる経験・スキルを備えた社会人を厳選しながら採用できるのが通年採用のメリットです。こうして新卒一括採用の概念から発想を転換してみると、人材開発・育成にかかるコストが押さえられることから、通年採用は生産性が高く、ROIも高いと考えることができます。
慢性的な人材不足にある日本で、即戦力・ポテンシャル人材を通年採用する際に最も重要なのが選考方法です。学歴・年齢などの条件で「そぎ落とす」旧来型の選考ではなく、面接などの先行プロセスで、人事担当者や上司となる人が自社のビジョン、成長戦略、そのポジションで得られる仕事の達成感・面白さ、最新のトレーニングがあること、柔軟な働き方を許容する企業文化などを積極的「売り込む」ことが採用成功のコツです。また、収録した動画インタビューを提出してもらってプレゼン能力を測ったり、ランチをしてコミュニケーション能力や価値観・マナーをみるなど、多様な選考手法も取り入れられるようになっています。旧来型の選考方法から、クリエイティブな選考へと発想を転換することで、応募者の能力を見極め、採用後すぐに「戦力」として活躍してくれる即戦力人材の採用に成功している企業が増えています。
「新卒研修」も「オンボーディング」に刷新
比較的短期間で「戦力」となる即戦力・ポテンシャル人材を通年で採用すれば、入社後の研修に求められるものも必然的に変わってきます。
人材不足による採用競争の影響から、この数年では内定者研修を行う企業も増えていますが、「新卒研修」が一般的であるという慣習には大きな変化は見られません。新卒研修では3ヵ月前後の期間、企業理念にはじまり、社会人としての考え方、ビジネスマナー、業界の専門知識などを座学(Off-JT)を中心に行います。しかし、これに対して、外資系など兼ねてから通年採用を行ってきた企業では「オンボーディング」が主流です。
会社のビジョンや事業戦略のオリエンテーションにはじまり、ビジネスエシックス(企業倫理)・コンプライアンス研修を経て、仕事で使うシステム・ツールのトレーニングを受ける――。ここまでの流れは新卒研修に共通しますが、新卒研修との大きな違いは「長期的なプログラムを通じてチームに迎え入れる」といったオンボーディングの目的そのものにあります。先に挙げたとおり、キャリア・経験のある人材、役職のつくポジションで入社する人材もいるため、一人ひとりのジョブディスクリプションと経験・能力に合わせたオンボーディングプランを準備するのです。オンボーディングプランでは、最終的なゴールを設け、それまでに仕事に必要なスキル・知識が十分に備わり、企業文化になじんでチーム・会社の一員として業務を遂行できるように組み立てます。30日・100日などの節目にレビュー(成長評価)を行い、オンボーディングの成果を確認し、プランを調整できるようにします。
もうひとつ重要なのが「評価システム」です。新卒・中途という概念がなくなれば、会社の在籍年数や年齢で評価されるのではなく、「能力」と「成果」を評価基準とした評価システムが不可欠です。
従業員の専門性を高める施策の大切さ
従来の日本の社員教育は社内研修が中心で、社員を外部の専門家に触れさせるなどのオフサイトトレーニングのような、専門性を高める教育はあまりなされていませんでした。加えてジョブローテーションのような、ジェネラリスト型のキャリア形成が中心であり、個々の専門性を高める方向には向いてきませんでした。
大学院に通うなど、生涯継続した学びである「リカレント教育」の重要性が叫ばれているのも、専門性の高い人材が求められていることが背景にあると言えます。世界に伍するプロフェッショナル人材を確保するには、その人の専門性がどのように活かされるか事前に明示するという「ジョブディスクリプション型」の採用が鍵であると言えるでしょう。
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