「挑戦」とは、恐怖を乗り越え、世界への扉を開くこと

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ロバート・ウォルターズは、1985年にイギリスで創業して以降、世界30ヵ国で人材紹介事業を展開しています。ロバート・ウォルターズ・ジャパンは2000年に東京にオフィス、次いで2007年に大阪オフィスを開設し、19年にわたって日本で転職を支援してきました。

今、外資系企業を中心にグローバル人材が求められています。ロバート・ウォルターズでも、この「グローバル人材」というキーワードを重視しています。今求められている「グローバル人材」とは何なのでしょうか。また、人の人生において「挑戦することの価値」とは何なのかについて、ロバート・ウォルターズ・ジャパン代表取締役のジェレミー・サンプソンに聞きました。

■外資系企業が求める「グローバル人材」とは

ロバート・ウォルターズ・ジャパンが扱う転職の75%は日本人だ。日本人が外資系企業や日系のグローバル企業に転職することを手助けしている。そのような企業が求める人材を「グローバル人材」とした場合、求められるものが3つあるとサンプソン社長は語る。ひとつは英語力だが、それだけに留まらないという。

「グローバル人材となるために、英語の能力は大事な要素ですが、完璧で流暢な英語を使える必要はありません。むしろ、グローバル・スペシャリストである必要があります。ジェネラリストではなく、スペシャリストです。例えば、会計や人事など特定の分野において、専門家であることを、我々の顧客企業は求めています」

つまり、ロバート・ウォルターズが扱う「グローバル人材」とは、単に英語力があるという意味ではなく、特定の専門技術分野と結びついた英語力のある人材という意味なのだ。「技術」とは、工学分野に限らない。プログラミングや会計、人事もまた専門的な「技術」だとサンプソン社長は定義する。

■自分で考え、イニシアチブが取れる人材

専門性と英語力。それが「グローバル人材」の条件であることはわかった。しかし、それだけだろうか。

サンプソン社長は加えて、「自らイニシアチブが取れる人」をグローバル人材の条件として掲げた。

「自分の考えやアイデアを提案でき、上からの指示を受けて動くのではない、独立して自律的な人材を、外資系企業では求めています。それは、ビジネスを自ら推進できる人材です。どんな分野であっても、上からの指示を待っているのではなく、自ら考え、考えを周りに伝えることのできる人材が求められています。今行っている仕事が、ビジネスゴールを達成するために必要だと自ら考えたことを行える人材です」

つまり、外向的で、柔軟で適応力のあり、「自発的に考え、取り組める人格」が、実は「グローバル人材」の隠れた要素なのだ。

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■海外経験やMBAは必須要素ではない

では、そのような人材はどこにいるのだろうか。

「その答えを完璧に知っていたら、私達の仕事はもっと楽になるでしょうね(笑)。私達の仕事の大部分はそのような人材を探すことに費やされます。でも、どこの部署、どこの会社にいるとは言えません。それは個々の人格に依存するのです」

「グローバル人材となるために、海外経験はとても有益ですが、必須とは言えません。海外経験は多くの視野や技術や経験をもたらしますが、同時に私達は、海外経験のない人も多く支援してきました。日本企業にも、英語を話し、海外経験がなくとも、グローバルビジネスを行っている人材はいます」

また、MBAなどの大学院における教育は、グローバル人材となるために最も重要なものではないとサンプソン社長は言う。

「あなたが何を知っているか何を勉強したかよりも、何ができるかが重要なのです。大学院に行くことが、必ずしもキャリアに有益だとは言えません。MBAはときに、より大きな成功への自動エレベーターだと見られる傾向にあります。確かにMBA取得によって、多くの示唆や知識、ビジネスに対するより広い視点が得られますが、科学、工学などの一部の分野を除けば、大学院に行くことが自動的ステップアップとなるとは言えないのではないでしょうか」

英語力、専門性、そして人格が求められるグローバル人材。ここで求められる「人格」を知るには、仕事や人生に対する考え方が重要だ。

■「仕事とは、あなたが何者であるかを定義するもの」

サンプソン社長に、「仕事」と「転職」に対する考え方を聞いた。

「仕事とは、私にとって、今の私を形作っているものだと言えます。自分はとても幸運なことに、今の自分の仕事を愛していて、だからこそ、13年間ロバート・ウォルターズとこの業界で働いているし、いまだに毎朝仕事に来ることを楽しみにしています。だから、私にとって仕事とは、何かに対して情熱を持って取り組むことであり、楽しみであり、人生に価値を見出すものだと思っています」

「全ての人が私ほど幸運かどうかは分からないのですが、私は、仕事とはあなたが個人として何者であるか定義するものだと思っています。必ずそうでなければならないというものではないですが、あなたが何者であるかを形作り、情熱を持てることに対して、楽しむことであり、きっと仕事とはそれが可能なものだと思っています」

■「転職」とは、人生における大きな変化

「転職とは、どんな場合でも、人生における大きな変化です。他の大きな変化は、結婚、子供ができる、といったことでしょうか。ですから、人が仕事を変えようと思うときは、人生における大きな『挑戦』なのです。日常を変えなくてはなりません。起きる時間から、一度築いた人間関係まで、大きな変化が起きます」

「多くの場合、人は人生の変化に直面する準備が出来ていません。一つの会社で一生働くことが幸せな人もいます。でも中には、挑戦したい人、より多くのものを切望している人もいます。そのような人は、よく準備して求められるステップを踏む必要がありますが、それは簡単なことではありません。だから私達の仕事があるわけです」

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■挑戦とは、心の中にある「恐怖」を乗り越えること

転職が、人生における大きな「挑戦」であるとするならば、その「挑戦」は人に何をもたらすのだろうか。それは、恐怖を乗り越えることだとサンプソン社長は指摘する。

「転職で得られる分かりやすいものとしては、より良い職場環境、仕事内容、上司、給料、評価、昇進などです。でももっと説明が難しいものとしては、『挑戦するという感覚』や『達成するという感覚』があります。なにか新しいものに挑戦するとき、人は必ず何かを学びます。あなたの能力や経験に新たなものが加わります。挑戦する意味、変化に対応する力を学びます。そして、おそらく同時に、心の中にある『恐怖』を乗り越えるでしょう」

「挑戦することは、人生の大きな幸せや満足への扉を開く行為です。もしかしたら、挑戦とは、物事に対する好奇心であるのかもしれません。挑戦とは、今までの自分の考え方を大きく変えて、違う場所に自分を置くことです。物理的にも、精神的にも、感情的にも。そして、それは成長でもあるのではないでしょうか。現状に満足していない人にとって、挑戦は一つの答えなのかもしれません」

■挑戦を考える人のパートナーとなり支えるロバート・ウォルターズ

人生の大きな変化でもあり挑戦でもある転職を、ロバート・ウォルターズはどのように支援しているのだろうか。長年外資系企業を中心に転職活動を支援してきた実績からくる「情報」の量と質も大きな特長だが、何より重視しているのは、コンサルタントが、転職候補者と信頼に支えられた人間関係を作り、ともに考え、パートナーとしてアドバイスしていくことだとサンプソン社長は強調する。

「ロバート・ウォルターズでは、転職を成功させたコンサルタントに歩合給を与えるということを行っていません。なので、当社のコンサルタントには、候補者を無理やり転職させようという考えはありません。挑戦をためらっている人がいたら、現状のほうがいいのではとアドバイスすることもあります」

「しかし、もし挑戦したいのに何か恐怖があるのであれば、長い人間関係の付き合いの中で、私達はサポートし、アドバイスしていきます。転職を決めるまで、1年から3年の関係になることも珍しくありません。その人が情熱を持っていることを理解し、その人のためになる仕事や企業をアドバイスするのが特長です」

■グローバルに挑戦したい人材を求めている

最後に、サンプソン社長に、ロバート・ウォルターズが求める人材へのメッセージを聞いた。

「グローバルな世界に対して挑戦したい人、現状に満足していないで、自分の潜在能力がどれくらいなのか知りたい人を私達は求めています。私達は、顧客企業や日本が、国際的な競争力を持つ存在であってほしいと考えています。そのような『挑戦』をしたい人を待っています」

「私達は、転職を考えている方々と長い関係を築きたいと思っています。もし自分の選択に自信がない人がいたら、その人に会って、話して、理解したいと思っています。その人の背景や状況を理解し、その人が取り得る選択肢について、ともに考え、万全な備えをアドバイスしたいと思っています」

「転職のプロセスには、大きなストレスが伴います。そのストレスを無くしてあげることは出来ませんが、準備段階から手助けすることで、できるだけストレスが小さくなるようにサポートしていきたいと思います」

グローバル化する時代の中、企業は「グローバル人材」を求めている。それは、専門性や英語力に限らず、自ら考え行動できる人格を持った人のことだ。グローバルな世界へ、転職という人生における大きな「挑戦」を行うとき、パートナーとして傍らにいる。ロバート・ウォルターズのコンサルタントはそういった存在でありたい。